Revised 2005/1/6
よく相談されるのが、「妻がパートに出ることになったんですが、税金はどうなるんでしょう。」というものです。
税 金
奥さんは、所得税法上、扶養家族として配偶者控除、配偶者特別控除(注1)が適用されます。
奥さんのパート収入とか、内職の収入とかが多ければ多いほど、ご主人の給与所得の年末調整で控除される配偶者控除、配偶者特別控除の金額が少なくなり、その分、その年に算定されるご主人の所得税が多くなります。(注2)
社 会 保 険
ご主人がサラリーマンだとしたら、ご主人は、政府管掌の社会保険か、又は、その会社あるいは会社の属する業界で運営する共済組合の社会保険に加入しています。
この場合、ご主人は、健康保険の被保険者(健康保険料を払っている人で、その保険料の半額が給与から天引きされています。)であり、奥さんは、健康保険の被扶養者(ご主人の健康保険証で扶養者の欄に記載される人)となります。
また、ご主人は、厚生年金の第二号被保険者(保険料を払っている人で、その保険料の半額が給与から天引きされています。)であり、奥さんは、第三号被保険者(サラリーマンの妻として、基礎年金保険料(国民年金)を支払う必要はありません。)となります。
社会保険では、奥さんの年収が130万円以上(奥さんが60歳以上、あるいは障害者の場合は、年収180万円以上)ある場合、ご主人の被扶養者と認められません。(注3)
被扶養者と認められないという意味は、ご主人の健康保険、年金とは、別に奥さんご自身で健康保険、年金に加入するということです。つまり、前年奥さんが働いていないとして、年間に、国民健康保険25,660円+33,754円×1人+5.7×0円=約59,400円と、国民年金159,600円の計219,000円の支出が増えることになります。(注4)
奥さんが働き始めて、その年の年収が130万円以上になりそうならば、ご主人は会社にその旨届出を出す必要があるでしょう。
税金と社会保険
配偶者控除、配偶者特別控除が奥さんの給与収入等によってどのように変化するのかを見てみましょう。
給与・内職収入 (以下の数値以上) 合計所得金額 配偶者控除 @ 配偶者特別控除 A 控除合計額
@+A0 0 380,000 − 380,000 1,030,000 380,000 380,000 − 380,000 1,030,001 380,001 − 380,000 380,000 1,050,000 400,000 − 360,000 360,000 1,100,000 450,000 − 310,000 310,000 1,150,000 500,000 − 260,000 260,000 1,200,000 550,000 − 210,000 210,000 1,250,000 600,000 − 160,000 160,000 1,300,000 650,000 − 110,000 110,000 1,350,000 700,000 − 60,000 60,000 1,400,000 750,000 − 30,000 30,000 1,410,000 760,000 − − −
この表は、給与・内職収入と合計所得金額と配偶者控除、配偶者特別控除の関係を表示しています。給与・内職収入103万円の欄は、給与・内職収入103万円で、給与・内職収入103万円−65万円=合計所得金額38万円は、合計所得金額38万円までのときに、配偶者控除は38万円、配偶者特別控除は適用されません。給与・内職収入105万円から1,099,999円までは、合計所得金額が40万円から449,999円までとなりますから、配偶者控除は適用されず、配偶者特別控除36万円が適用されます。
65万円とは、給与所得控除額といわれるもので、事業所得者にとっての経費と同じです。給与収入が年1,618,999円までは、給与所得控除額は65万円です。
奥さんがパートで働く
例えば、奥さんが今年6月からパートで働き始めて、12月までにいわゆる税込み給与合計が82万9千5百円あったとします。
上の表では、給与収入80万円の場合、合計所得金額が80−65=15万円ですから、配偶者控除38万円のみ適用されます。
ところが、税込み給与が例えば131万円だとすれば、所得は131−65=66万円ですから、38万円以上であり、配偶者控除は受けられず、配偶者特別控除が11万円受けられます。
この場合、奥さんがパートに出る前より、ご主人の給与所得からの控除が38−11=27万円減りました。
奥さんが事業をする
奥さんが事業とかを行う場合も同じです。
今年、奥さんの事業所得が75万円あるとしますと、上の表の(合計)所得金額75万円の欄を見ます。配偶者控除は0円、配偶者特別控除は3万円です。
奥さんが事業をしない頃より、ご主人の給与所得からの控除が38−3=35万円減りました。
ご主人の年収が多い
ご主人の税込み給与が年約1,232万円を越える場合は、配偶者特別控除が適用されませんので、パート収入によって変わるのは配偶者控除のみです。奥さんのパート収入が年103万円を超えますと、配偶者控除がゼロとなります。
同じように、奥さんの事業所得が38万円を超える場合も、配偶者控除がゼロとなります。
奥さんがご主人の社会保険から外されるとき
奥さんがパートに出ることによって、社会保険料の扶養者から外されるのは、その年の年収が130万円以上になると分かったときです。そのとき、奥さんは、国民健康保険、国民年金に入るか、パート先の社会保険に入るか、しなければなりません。
年収130万円と給与収入130万円とは
少し違います。社会保険がいう年収130万円には、給与収入以外に、パート先から出る交通費(非課税の通勤手当)を含んでいます。
上の表で、奥さんの合計所得金額に含まれるのは、給与所得、事業所得だけではありません。
奥さんの不動産所得、配当所得、生命保険の満期益などに一時所得、土地建物の譲渡所得、申告分離を選択した株式譲渡所得、山林所得、退職所得などが含まれます。
(注1)配偶者特別控除の不適用
ご主人の合計所得金額が1千万円超である場合、配偶者特別控除は適用されません。(注5)
合計所得金額が1千万円超の意味は、ご主人がサラリーマンであるとして、給与等の収入金額(いわゆる税込みの給与です。)が約1、232万円超の場合、適用されません。
上記金額は、給与所得の速算表から以下のように算出しました。
給与等の収入金額X×95%-1,700,000円>10,000,000円とすると、X>12,315,789円となります。
(注2)「平成 年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」のアンダーラインの部分が、配偶者控除、配偶者特別控除を計算するための資料となります。
(注3)年収130万円の意味
年収130万円以上とは、(いわゆる税込みの給与+支給されている交通費)の合計額が130万円以上となる場合です。
給与所得者は、上記のとおりですが、奥さんが事業を営んでいる場合に、年収130万円以上とは、収益ー費用=所得(利益)(いわゆる雑所得か事業所得)が130万円以上となる場合です。
(注4)国民健康保険料と国民年金の金額
奥さんの年収が多くなって、ご主人の社会保険に被扶養者として入れなくなった場合、奥さんは勤務している会社の社会保険に加入するか、または、国民健康保険、国民年金に加入することになります。
国民健康保険料の算定式(大阪市の場合)は以下の通りです。
平成15年度国民健康保険料=25,660円+33,754円×世帯人数+5.7×平成15年度住民税
この保険料額の上限は、年間53万円です。
奥さんの年齢が40歳以上であれば、介護保険も支払う必要があります。その算定式は次の通りです。
平成15年度介護保険料=3,343円+5,825円×40歳以上の世帯人数
この保険料額の上限は、年間8万円です。
したがって、国民健康保険料の最大値は、40歳未満なら、53万円であり、40歳以上なら、61万円となります。
なお、国民健康保険料の算定式及び保険料の金額は、各市町村によってそれぞれ異なっていますので、詳しく知りたい場合は、各市町村国民健康保険課に尋ねてください。
国民年金の金額はつぎのとおりです。
年間の国民年金 =13,300×12ヶ月=159,600円
年間の付加年金 =400×12ヶ月 =4,800円
したがって、定額の国民年金は年間159,600円で、付加年金を付けると、年間164,400円となります。